1 演奏会のご報告
5月3日(火)に、前号でお知らせしましたヘンデル作曲「メサイア」の演奏会が目黒区中小企業センター区民センターホールで開催されましたのでご報告いたします。コロナ禍の中ですので、演奏者、合唱、ソロリストもマスクをかけたままでの演奏会。ホールも400人収容ホールでしたが、3部作の合間に、指揮者であり、牧師である小田彰先生が「メサイア」の内容を解説してくださり、とても恵まれた「メサイア」を聴くことができました。今回は、ウクライナ支援を兼ねての公演でしたが、この秋、11月26日(土)に紀尾井ホールで、ウクライナ出身オクサーナ・ステパニュックさんをソプラノ独唱者として招くとのこと。早くウクライナ侵攻が解決することを祈ってやみません。
次回の予告↓
2 ウクライナ侵攻について
5月6日の時点で、ウクライナ侵攻は解決の糸口がない状態で、事実上、長期の戦争になるのではないかと懸念されております。前号では、ウクライナ内のウクライナ正教会がロシア正教から4年前に正式に分離したことをお話しました。注意が必要なのは「ロシア正教会管轄下のウクライナ正教会」と「独立したウクライナ正教会」とは違うことです。今までは、ロシア正教会の総主教がウクライナ正教会を事実上管轄していたものが、ロシア正教会の管轄外のウクライナ正教会が独自に承認されたということです。本来はその国に独立した正教会がその国の総主教によって管轄するのが本来の在り方です。但し、人材が整っていない場合は他の国の総主教が管轄していたということです。つまり、ウクライナはロシアの一部だという歴史的認識があったためウクライナの正教会は長い間、ロシア正教会の一部だったということです。ロシア正教会も同じようにギリシャ正教会から分離し、独立した過去の歴史があります。けれどもコンスタンチノープルにおかれている総主教座は、トルコ国内にあり、実質上、ロシア正教会が正教会の中で一番大きな正教会(一億5千万人)となりました。今回の「ウクライナ侵攻」では、ウクライナ領土内にある正教会が、更に独立したウクライナ正教会へ鞍替えをするケーが生じているということです。
ロシアが西側を仮想敵国とする背景には、政治的な理由があります。しかしながら、何故、ロシア正教会の存在が背後にあるのかという理由は、別な観点です。もともとソビエト連邦時代は、共産主義国家の下で、ロシア正教会は迫害され、完全に統制を受けて来たのです。そしてソビエト連邦崩壊後、没収されていたロシア正教会の資産はすべて返却され、自由に宗教活動が行えるようになりました。その中で、プーチン大統領の母親が、ロシア正教会の信徒であり、自身も洗礼を受けていることから、プーチン大統領がロシア正教会の復興を積極的に支援してきたという経緯があり、キリル総主教にとってプーチン大統領はロシア正教会の良き理解者だと考えています。ロシア正教会がプーチン大統領のウクライナ侵攻を進言したというのは間違いでしょう。
今回、WCC(世界キリスト教会協議会)はウクライナ侵攻に対して、ロシア正教会に非難声明を出しました。現在、ロシア正教会は、WCCの加入メンバーですが、軍事進攻は人道的に見ても正当化できるものではありえません。このWCCはプロテスタント諸教会が中心メンバーですが、3分の一は正教会だそうです。カトリック教会は、1000年前にギリシャ正教と分裂したのち、今も正教会とは破たん状態のままです。
バイデン大統領はカトリック信徒で、プーチン大統領はロシア正教会信徒なので宗教的な対話はかみ合わないし難しいでしょう。フランシスコ教皇も、正教会のキリル総主教とはかみ合わないでしょう。国連が機能しないように、キリスト教会の世界でも世界平和の機能ができずにいるのは、このように世界が分断しているからです、イスラムの世界から見る視点、プロテスタントの世界から見る視点、カトリックから見る視点、正教会から見る視点は別々です。人類がたどり着いた叡智は、世界の平和であり、問題はそれをどのように解決するか、世界第3次戦争をいかに防ぐのか。神の平和を祈る私たちにとってお互いに交流を持ち話し合いを続けること以外にはないでしょう。人類同士の戦いには勝者はいません。そしてキリスト教の一致運動である「エキュメニカル運動」を進めることが大事となります。
3 中国のキリスト教会について
今回は、ロシア正教会のこともあり、中国のキリスト教会も内容は異なりますが、独自の「キリスト教の中国化」という課題が習近平主席によって2018年頃から独自路線として打ち出されました。これは中国国家として全ての宗教は国家のために存在するという政治理論です。今までの制限付きの「信教の自由」から、国家によって宗教を統制する政策が始まったのです。まず、中国国内の諸宗教は、北京にある宗教局によって管理されております。ここでは宗教団体の登録、認可、指導を行う共産党内の機関で、特に文化大革命以後、宗教行動の緩やかな規制の中で、屋外での宣教禁止、18歳未満への宣教禁止、政府機関への批判の禁止などを軸に、過去の植民地時代における外国からの内政干渉を教訓に、海外からの宣教師、宣教行動を一切排除し、中国人のための、中国人による、中国人の自力による宗教活動を認めたのです。そこで中国のプロテスタントには教派は存在せず、一つの中国プロテスタント教会があり、またカトリック教会は、バチカンと関係を遮断した中国カトリック教会が最近まで存在していました。その他には仏教とか他の諸宗教も同様な扱いを受けています。
私は財団法人 日本聖書協会の総主事として1999年から20年間余、中国のキリスト教会(CCC)と関係を持ち仕事をして来ましたが、2000年当時は、経済力のないCCCに聖書を印刷する製本工場を、聖書世界連盟(UBS)を通して南京に設立し、中国国内の教会に頒布するために努力を重ねて来ました。その結果、この製本工場は今では近代化され、累計約8000万冊近くの中国語聖書を国内で制作・頒布し、これによって急激な中国国内のクリスチャン人口(国内10%の1億人)の増加を見たのです。そして中国語聖書のみならず、現在では全世界の100か国余の聖書を印刷・製本し、世界最大の聖書輸出国となっています。
(2008年に新製本工場が完成し、年間1億冊の多言語の翻訳された聖書が輸出できるようになった。)
ところが、習近平体制になったころから、宗教統制が次第に厳しくなり、中国のキリスト教は西洋のキリスト教とは相容れない。つまり国家と民衆に仕えるキリスト教でなければならないという中国化の路線を打ち出し、規制が強まり、現在は他国の教会との相互の交流も途絶えるような状況となりました。それとは反対に中国カトリック教会は、中国国内の司祭の任命権を中国カトリック教会が主張していたため、バチカンとは断絶していましたが、最近、カトリック教皇がその任命権を追認する形で、バチカンとの関係が修復されたのです。フランシスコ教皇がこの提案を受け入れました。これによって中国国内のカトリック教会は、内部分裂していた地下のカトリック信者がなくなり、日の目をみるようになりました。2018年に北京にあるカトリックの神学校と教会を訪れましたが、概ね中国カトリック教会はバチカンとの関係の回復を歓迎しているようです。
次に中国プロテスタント教会(CCC)ですが、やはり、世界キリスト教協議会(WCC)に加盟をしています。しかしこの度の共産党の宗教規制の強化により、欧米のキリスト教会とは今後、交流が閉ざされてしまうような状態です。ロシア正教会と交流するのが難しいように、海外プロテスタント教会との相互関係は難しくなるのではと案じています。2017年に日本基督教協議会を通じてCCCを訪れましたが、神学校を訪問した時に愛国運動と称する「キリスト教の中国化」の教科書を見てその変化に大変驚きました。
宗教の役目は、社会的な奉仕や福祉への貢献であることを謳っています。
ロシアと中国のキリスト教会の在り方で共通することは、西洋の「社会や国家の自由主義」の中で、キリスト教会のリベラルな動きや発言に対して警戒感を抱えていることは、確かなことだと思います。
4 7月の参議院議員選挙に向けて
宗教と政治の問題を混同することは共に、間違った方向に向かいやすいので、過去の歴史の反省から政教分離の原則が唱えられています。しかし、神の平和を求める人々が意見の立場を超えて努力することは大事です。その意味で、キリスト者が政治に関わることは、大切だと思います。その意味で党派に関係なく、クリスチャン議員を祈り支えたいと思います。
前回、私の知人である遠藤正一さんのご子息である遠藤良太さんが「維新の会」から衆議院議員に当選されました。神戸在住で、全国区からです。次回の参議院選挙では、やはり神戸在住の、金子道仁さんが全国区から立候補されます。彼は現在、牧師でかつて外務省に勤務していました。詳細はネットで調べることができます。
5 5月のBIble message
5月29日(日)常盤台バプテスト教会での説教原稿を掲載します。YOU TUBEでは「常盤台教会 渡部信」で検索しますと誰でも礼拝の様子を観ることができます。